体育科のある高校での勤務経験のある皮算用です。体育科生徒の担任はしたことが無く、授業担当までですが。
個人的には『学力がそこそこ高く大学に行けるなら行きたい』と考えている中学生には体育科進学をすすめません。
高校?行ってもいいけど勉強したくない。俺にはサッカーしかない!
こんな状態ならば体育科進学もアリですが体育科は中学生からの人気もそこそこあるので偏差値は意外と高かったりします。
勉強もそこそこできて部活も好きです。
体育科に進学したら頑張って全国大会に行きたいです。
たいていこんな生徒が体育科に入学してきます。
中学時代に成績上位であったであろう生徒が「あれ?私の人生ってこっちルートなの?」とショックを受けていくのを見るのはなかなか心苦しかったです。
- その競技をどこまで続けたいか
- 自分は勝てる人間なのか
この辺を真摯に考えてからでないと高2くらいで後悔することとなります。そんな生徒をたくさん見てきました(T_T)
カリキュラム(時間割)
東京都立駒場高校保健体育科の教育課程(カリキュラム)を例にとります。
他の高校の体育科もだいたい似たものになるかと思います。
駒場高校保健体育科だと数学はⅠAまでしか習わないので一般入試での国公立大学受験は想定していません。
国公立大学入試では一次試験の共通テストで『数学Ⅰ+A』と『数学II+B』が必須であることがほとんどです。
授業0でも『数学II+B』を受験することはできます。
独学したり塾や進研ゼミ等で学ぶことになりますが部活がハードなので勉強を挫折すると思います。
週33時間
1番上の段に1~36までの数字がかかれています。これは1週間の授業時間数になります。
普通科が33時間、34時間なので7時間授業×3日+6時間授業×2日=33時間がベースとなっています。保健体育科は35時間、36時間ですが放課後の部活と繋げて+2カウントしていることでしょう。
保健体育科は他教科を削って体育が10時間あります。普通の体育っぽい授業もあるので時間割はだいたいこんな感じになります。『部活は毎日ある』と考えておく方がいいです。
※文部科学省のガイドラインでは週に1日程度の休養日を設けることとありますが実態は・・・。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
1限 | |||||
2限 | |||||
3限 | |||||
4限 | |||||
5限 | 体育 | 体育 | |||
6限 | 体育 | 体育 | |||
7限 | 部活 | 体育 | 部活 | 体育 | |
放課後 | 部活 | 体育 | 部活 | 部活 | 体育 |
ちなみに高校の部活だと平日は~19時まではザラで、野球部などは21時まで活動しています。
また、体育科生徒は途中での転部はできないことがほとんどです。
カリキュラムとして部活が組み込まれているので部活を辞めたくなったら地獄です。せいぜい怪我等で『競技ができない』レベルならばマネージャーとして部活に在籍することが可能かもしれません。
普通科生徒と体育科生徒は同じ部活に所属する
同じ学校なので同じ部活に所属します。体育科生徒の方が練習時間が長いので上達の点では有利です。普通科生徒がレギュラーをとるのは難しくなります。
練習時間の少ない普通科生徒にレギュラーをとられると体育科生徒のプライドは傷つくでしょうし裏で小馬鹿にされそうですし普通科生徒を逆恨みしそう・・・。いじめに繋がるかも。
体育科生徒の進学先
学校側が当初想定したのは『学業よりもスポーツを頑張りたい生徒』です。
- 高校卒業後は就職する
- 高卒公務員になる
- スポーツ推薦で大学進学する
華々しい戦績のある生徒ならば私立大学からオファーは来ますが学部学科選択は生徒側にはほとんどありません。
そもそも高校のカリキュラムが学業重視じゃないんだから大学の薬学部とか看護学部とか無理よ。
基本、体育系の学部学科になります。体育の教員免許が取れるかな。
ちなみにスポーツ推薦で入学した場合、大学でもその競技を高校以上の時間をかけてやることになります。
卒業生が時々高校にやって来て嘆くのよ・・・。「もう部活辞めたい。大学までも部活したくない」って。
スポーツ推薦で入ったので辞める=退学になるので本当の本当に困ってました。
大学からのオファーが来ない普通の生徒ならば学校側が想定しているのは高卒公務員です。特に警察や刑務官が倍率がそう高くないのでオススメですが消防に憧れる生徒が多いです・・・。消防は高倍率なのでたいてい1~2浪して専門学校に通います。
『2浪で受かる』ってわけじゃないよ!
2浪して無理なら消防を諦めてるからね!
それでも大学に進学していく
大学進学に対応したカリキュラム編成となっています。
駒場高校の教育課程表の右下にこうかかれています。どこの体育科高校でも似た説明を受けることでしょう。
家庭の大学進学熱は依然高いです。
『大学進学という点からは体育科は不利だよ』
なんて事実を伝えると志願者減ですから。
私も中学校の先生に説明しました。
体育科生徒も大学に進学していますよ。大学進学できます。
詳細に言うなら下記表現だったと思います。
「同じ学校の普通科生徒と比べると大学進学先は劣ります。国公立は無理ですが、体育科生徒も偏差値~55くらいの私立大学に進学しています。ボリュームゾーンはFラン大です。大学出てからの就職はしんどいかもしれませんね・・・。」
各高校には指定校推薦がたくさんあります。今どき定員割れ大学なんてザラなので。
スポーツ推薦が取れなかった生徒も指定校推薦で多く進学していっています。
戦績が華々しくない体育科生徒でも大学進学はできます。
かわいそかった生徒
勉強もできて部活も好きです。
体育科で部活頑張って全国大会に行きたいです。
(薬剤師になりたい)
勉強もできて部活も好きです。
体育科で部活頑張って全国大会に行きたいです。
(高校の先生になりたい)
中学生時代は学年順位10%以内の生徒が体育科に進学してきました。全国大会には出れませんでした。箸にも棒にもかかっていませんでした。そんなレベルよ!
高2くらいから自身が望むような人生を歩めていないことに気付いたようで、どんどん性格が歪んでいくのを見てきました。
全ての夢を叶えることは難しいですが最も叶えたいことは何だったのでしょう。
日本では多くの子どもが部活を通してスポーツしています。
どこまで何を求めますか?
日本国内で飯が食えるレベルに稼げるスポーツはすごく少ないです。
- 相撲←国技なので税金入ってる
- 野球
- サッカー
- ゴルフ
中高生で競技人口の多いバスケットやソフトテニスでは飯が食えません。
甲子園球児は毎年47都道府県×9人=423人以上現れますが全員はプロになれません。
スポーツすることは心身の健康によくいい事も多いですが進路選択として高校の体育科を選ぶ際にはよくよく考えてください。
授業が少なくてその分部活が多い!やったぁ!!
それ、ホントにそれでいいんですか?
- その競技をどこまで続けたいか
- 自分は勝てる人間なのか
日本一は無理だけど頑張ったら50位くらいなら狙えるんじゃないかな。
50位も十分立派ですが50位では飯が食えません。飯が食えないもの=趣味だと思います。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
1限 | |||||
2限 | |||||
3限 | |||||
4限 | |||||
5限 | 部活 | 部活 | |||
6限 | 部活 | 部活 | |||
7限(16時) | 部活 | 部活 | 部活 | 部活 | |
~20時 | 部活 | 部活 | 部活 | 部活 | 部活 |
高校生が勉強時間を削って趣味に毎日4時間以上も費やすのは反対です。
俺にはサッカーしかない!
本当に『競技で飯を食うしか道がない』ならば勉強してる場合じゃないので競技に100%割くべきです。中途半端に高校の体育科なんて選んじゃダメよ。
サッカーの専門学校(各種学校なので中卒で入れる)もありますし、南米の子どもはサッカーボールが高価で買えないため小さなボールで練習しているので玉扱いが上手いそうです。
俺には陸上しかない!
・・・。河川敷とか走る?
ちなみに体育科に入学してしまっていて後悔しているならば転校した方がいいです。
時間は取り戻せない貴重なもので、進路実現に向けて1浪2浪3浪するよりもサクッと転校して自分の進路実現に合ったカリキュラムのもとで勉強した方がいいです。
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