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発達障害に気づかないまま高校進学した場合

教育(高校)徒然日記
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現役高校教員の皮算用です。過去に中学校・特別支援学級でも勤務経験があります。

2017年【発達障害に気づかない大人たち】という本が37万部のベストセラーとなりました。今でこそ発達障害というものが認知されつつありますが、まだまだ発達障害を誰にも気づかれずに大人になっていく子どもたちはいます。

小学校高学年辺りで発達障害に気づく

たいていは自己のアイデンティティ(個性)が確立する10~13歳辺りで本人及び保護者・教員が「あれ?」と感じ始めます。

普通学級に在籍したままか、支援学級に移るか、はたまた通級ということで普通学級と支援学級の両方を組み合わせるかです。

 

これまでの小学校・中学校・高校だけでなく、校種をつなげた中高一貫教育小中一貫教育の2種類があります。

中学校をどちらに含めるか論議されていますが、教科指導の面(数学や英語教育の点において)では中高一貫教育の方が教えやすいです。

小中一貫教育は発達障害の生徒を義務教育段階で【支援学校への転校なく過ごせる】メリットがあります。

 

 

13歳で発達障害があることが判明した場合、通学している中学校に支援学級が無かったら、【そのまま在籍】するか【支援学校へ転校】するかになります。

年度途中ならば、教諭(正規雇用)が追加で配属されることはありません。現状の教員で対応するか、常勤講師(フルタイムの非正規雇用)が雇用され、配属されます。

ただ、常勤講師の雇用については、特別支援を得意とする人物が年度途中での雇用依頼に対応できるかどうかによります。

皮算用
皮算用

普通の人は6月や10月に体は空いてない。

3月末までその体制に耐えれば、4月からは特別支援教育の免許を持った教諭か常勤講師が配属されます。

高校進学後に発達障害に気づくこともある

たいていは14歳までに「みんなと違う」ことに気づきます。

過去に 高校生になるまで誰にも発達障害に気づかれなかった生徒がいました。

16歳で発達障害であることが分かった生徒

入学してからずっと不思議ちゃんだと思われていました。

受け答えは「はい」「はい!」と目を見てよく返事もするので、単に怠け者で言われた事をやらないだけの勉強しない低学力生徒なんだと思われていました。

さすがに16歳でこの言われた事をやらないは度が過ぎているだろう、受け答えも返事はするけれど、何をしないといけないか尋ねると答えられないといったことが先生間で話題になりました。

先生
先生

プリントの締切が過ぎているぞ。

生徒
生徒

はい。すいません。

先生
先生

来週の金曜日までに必ず出しなさい。

生徒
生徒

はい。

先生
先生

数学難しいか?

生徒
生徒

ちょっと・・・。

先生
先生

分からん時は聞きにきなさい。いつでも相手するから。じゃあ、プリントしっかりな!

生徒
生徒

はい!

先生
先生

提出日分かったな?

生徒
生徒

・・・。

先生
先生

提出日はいつだった?

生徒
生徒

??

校内で該当生徒が発達障害でないかという意見がまとまり、保護者に話した上での発達障害の検査が行われました。

(たいてい管理職と教員数名で構成された校内の対応委員会があります。)

 

 

検査は校内ではなく、教育委員会で行われます。

該当生徒は高機能自閉症でIQは50未満でした。

(日本人のIQの平均は70と言われています。)

友人
母親

どうりでお使い頼んでも品物が間違っていて、ふざけてるのかと思ってたわ~。

保護者に話を聞くと、家~学校間の道が分からないそうで、登校時は同じ制服の生徒の後についていっていたそうです。

帰りは友人と一緒に帰っているので大丈夫とのことでした。

皮算用
皮算用

イヤ、これ、お母さんもっと早くに気づいてあげて!

もちろんIQ50未満の生徒にとって、高校の授業はよく分からない学問です。特に数学は苦手だった様子です。

高校生になってから発達障害が判明した場合の学校の対応

生徒本人も家庭も特別支援学校への転校は望みませんでした。

 

年度内は在籍している先生で対応し、新年度から数学教員を1名追加で配属することになりました。

皮算用
皮算用

英数国・・・家庭科など9教科位ありますが、該当生徒のための先生プラス(加配)は「数学のみプラス1名」でした。

高校ですので、特別支援学級なんてものは次年度以降も開設されません。

授業について

年度内は在籍している先生たちで対応することになりました。数学の授業はチームティーチングで、教員が2人体制となりました。2人目の先生は該当生徒に付きっきりでノートを書くのを促すんです。

全く意味の分からない数学の授業を受け、黒板に書かれた何かをひたすらノートに写すという時間が週に5回ありました。

(数学Ⅰは3単位・数学Aは2単位です。)

 

さすがに「こんな意味のない授業を翌年も受けさせるのはどうか」ということになり、次年度からは数学教員(非常勤講師・週6時間契約)が1人追加で配属されました。

高校2年生では数学Ⅱ(4単位)と数学B(2単位)を学びます。1年生の内容よりも難しくなります。

 

新年度からの数学の授業時間は該当生徒のみ別授業となりました。別室にて1対1の授業です。本人が分かるレベルの授業内容となりました。

年度始めに算数学力確認テストを行いました。学力は小学校2~3年生でストップしていました。

以降の授業では、小数・分数の計算や「りんごを14個持っています3人で分けると1人何個ずつになり、いくつ余るでしょうか」みたいな文章問題を取り扱いました。

「何時何分かこたえよ」なんて問題にも取り組みました。

文章問題や時計の問題は特に苦手だった様子でした。

成績について

発達障害であることが判明した時点で、テストの点数がどれだけ悪くても赤点は付きません。高校は5段階評価なので成績は2以上が確約されます。

新年度からは数学では、定期テストの問題も授業内容に合わせた【生徒オリジナルのテスト】となりました。60点や80点近くとれるようになりました。数学Ⅱの評価は2ですし、数学Bの評価も2です。

 

通知表の記載を【算数・数学】や【基本数学】等に名称を変更できないか管理職にかけあいましたが、不可でした。

 

数学以外の教科では、定期テストの問題は他生徒と同じだけれど、別室受験のうえ教科書・資料集等持ち込み可でした。

高校での成績のつけ方
現役高校教員です。教科は数学なので、数学の成績のつけ方です。もちろん、成績のつけ方は各学校で異なっています。

もしも発覚していなかったら

授業や成績は普通の生徒と同じ基準で付けるので、成績は1(赤点)が並んだはずです。実際に1学期は体育、芸術科目以外ほとんど1でした。

もちろん進級はできず、留年か転校か自主退学の3拓でした。

よく入試で合格したね

友人

よく高校入試で合格したね。

なんて声が聞こえてきそうです。

 

定員割れをおこした学年でした。そのため、入試の点数に関係なく合格しました。

高校卒業後の進路はどうしたの?

生徒本人は美容師になりたいと言っていたのですが、IQ50未満で返事はいいけど、指示内容が理解できない人物が私立学校に進学するのは個人的にすすめません。

(専門学校の多くは私立です。)

 

私立学校は特別な事情の生徒の面倒を、公教育ほど手厚くはみてくれないからです。

公立高校ですら、人件費の関係で該当生徒のために行った教員の追加配属は「6時間講師を1人雇う」でした。2,500円×6時間×4週=月に6万円(年間72万円)です。

美容師系の専門学校の年間の授業料等は130万円程度です。72万円もかけてはくれません。

 

「特別なことはしていらない。他の生徒と同じ扱いでいい」ならば入学は可能です。専門学校には授業料が入ってくるので断る理由がないからです。

  • 美容師としての技術が身につくのか?
  • 雇用があるのか?
  • 専門学校は就職についても面倒をみてくれるのか?

といったことが後々の不安です。

専門学校なので、学ぶために行くところです。「就職あっせんはしていません」と言われればその通りです。

皮算用
皮算用

資格さえ取らせれば学校の仕事(責任)は完了です。

該当生徒は発達障害の検査後に障害手帳を取得しました。障害手帳があるので、【障害者枠】での就職を先生たち全員ですすめました。

最終的に高卒で正社員に就職していきました。

先生

美容師の夢を諦めさせたんだ。

なんて言われそうですが、おそらく美容師として雇われるのは難しいですし、美容師の仕事を継続するのも難しいと思います。

そのため生徒には、「本当に美容師になりたかったら自分で店を開きなさい。そのためのお金を働いて貯めよう。専門学校は何歳からでも入学できるよ」と話しました。

美容師になりたい高校生にアドバイスしていること
一生の職にするならわざわざ『20歳貯金0雇われ』からやらなくて、40歳貯金500万円から開業をすすめたい。

生徒の美容師への本気度はいかがなものでしょうか。夢を叶えて美容院を経営して欲しいのですが。

発達障害グレーゾーンの生徒は多い

個性尊重教育で、あれも個性これも個性となっています。「個性と呼ぶには、どうなの?」な生徒も多いです。

明らかにコミュニケーション能力がだだ低い生徒もいます。

皮算用
皮算用

きっとこのまま大学に行って、就活で苦労して、26歳位から引き籠もりになりそうだな。

こんな風に感じてしまう高校生がクラスに数人はいます。

卒業生の追跡調査は行っていないので、高校卒業後5年(23歳)、10年(28歳)30年(48歳)経つとどのように暮らしているかなんて分かりません。

学校から発達障害の検査を提案しないの?

これはとてもデリケートな問題なので先生側からの提案は難しいです。

よほど「この生徒はちょっと・・・」といったレベルならば家庭への提案はできますが、「シャイ過ぎる。もじもじしていて反応が薄い」程度では、発達障害の疑いを家庭に投げかけるのははばかられます。

皮算用
皮算用

家庭と揉める元になるので、よほどでない限り高校からは提案しません。

逆に、家庭から相談してもらえると、学校としては助かります。

グレーゾーンの生徒の割合

体感でですが、普通科高校だとクラスで目に付くレベルの生徒は2人ほどいます。2/40=5%です。

この5%の生徒はグレーゾーンのど真ん中~黒寄りです。何らかの発達障害が判明する可能性が高いです。

クラスに2人は「大人になったらちゃんとやっていけるか心配だな」と思える生徒がいます。

生徒数1,000人位の学校だと50人グレーゾーンの生徒がいます。50人いる中で、最も目立つ数人は発達障害の検査を提案したり対策がとられますが、気付かれないままの生徒もいます。

 

生徒数1,000人位の学校の教職員(事務員・用務員含めて)数は100人もいません。全員には目が届きません!

そのため、やはり家庭からの提案をお願いします。

皮算用
皮算用

36歳になった彼らを想像しても、ハッピーだとは思えないんです。

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